第4章 転校生
「ん………」
ぐっすりと眠っていた彼女の悩ましげな吐息が耳を奪う。
ほんとに。
眠っている時まで僕を煽るなんて、華はすごいな。
「しょ、さま……?」
「うん、おはよう」
「!!……薔さまっ」
寝ぼけ眼の虚ろげな吐息が、急にクリアになる。
もう少しだけ、かわいい寝顔見てても良かったのにな。
「あたし……っ、また薔さまに迷惑を」
「大丈夫だよ」
「車まで運んでくださったのですか?あたし、気絶しちゃって、ごめんなさいっ」
「大丈夫だから」
「薔さま……っ」
「華」
ハンドルを握ったまま、視線もフロントから外さずにそう、呼べば。
華はビクン、と一瞬、動きを止める。
「僕が大丈夫、っていったら大丈夫。いいね?」
「……はい」
しゅんとして。
背もたれにもたれ掛かる華の頭に伸ばした左手。
「薔さま?」
「華は、かわいいな」
さっきまでのしゅんとした表情はすぐに、ばぁっと明るく綻ぶ。
かわいい。
ほんとに可愛くて。
今すぐにでも、僕のものにしたい。
誰にも触れられないように。
早く。
早く、慣れてよ、華。