第4章 忍び寄る魔の手
気づいた時には、もう遅かった。私の顔に、死柄木弔と呼ばれた男の手が触れていた。浮かぶのは、破壊される自分の姿…やられた。そう確信したその時、僅かながら身に覚えのある気配を感じた。それは、死柄木も感じたらしく。
「…ちっ……本っ当かっこいいぜ…イレイザーヘッド」
「そいつに…手ェ出すな…!!!」
ゴッ…
「ぐっ…!」
ーーー今だ…!!!
私は個性を発動させた。コイツら、さっきまで戦っていたヴィランと明らかに違う…!消ちゃん助けて、逃げなきゃ!!
「ビューティケア…シーバーム…!!」
「脳無…」
「ランチャー!!!」
シーバームランチャーは、自分の皮脂と水分を大量に使用する。そのため、一気に皮膚が乾燥し、あかぎれ、ヒビ…最悪脱水症状を引き起こしてしまうため1度しか使えない大技。さすがに死柄木もこれなら…
「え…」
私は確かに、死柄木に攻撃を仕向けたはずだった。なのに、目の前にいたのは脳無だった…しかも、全く効いてない…
「いい動きをする。だが、これで…」
その瞬間、体が宙に浮いた。それは、見覚えのある…捕縛武器。気づけば私は、彼の腕の中にしっかりと納められていた。
「…しつこいなぁ、イレイザーヘッド…そんなに生徒が大事か?」
「せ…せんせ…」
それは、顔面血だらけで、両腕が鬱血した姿の消ちゃんだった。彼は、立っているのが奇跡と言えるほどの重傷を負いながらも、最後の力を振り絞ったかのように左手で捕縛武器を操り、右手で私をしっかりと寄せていた。
「…ハァ…ハァ…こいつには…手を出すなと…言ったはずだ…!!」
「先生…!」
口は強気でも、彼の目に、もうほとんど光はなかった。見えているのか見えていないのか危うい線にいるのは目に見えてわかった。
「こいつには、指一本…触れさせん…!」
「潰せ、脳無…」
「先生!私はいいから逃げて…!!」
しかし、彼は聞く耳を持たなかった。私の言葉に反するかのように、私を抱き寄せる彼の力は、弱まるどころか強まる一方で、まるで何があっても離れるなと言われているような気がした。でも、私はもう個性が使えないし消ちゃんも満身創痍…2人ここで倒れるのが目に見えた。
あぁ、私はなんて無力…私にもっと力があれば…もっと強かったら…こんな体で生まれてさえ来なければ、消ちゃんを守ることが出来たかもしれないのに…!