第9章 戻った日常
(さくらside)
1週間の職場体験でヒーロー殺し ステインと戦い、奴から受けた治療が終わった私たちは、学校に戻るための荷物をまとめるために1度各自の職場体験の事務所に戻る事となった。みんなボロボロで、私も右手を深く損傷してしまって、しばらく右手が使えない状態になってしまった。今回の事件は瞬く間に世に知られ、各地に出向いていた他のクラスメイトたちにもその情報は届いていると思う。そして、消ちゃんにも…。私は職場体験に行ってから1度も彼に電話やLINEを返していない。知られたくなかったのもあるけど、何よりも心配させたくなかったのが本音。消ちゃんの事だから、こんな姿みたらきっと怒るんだろうな…
「準備できたかい?四楓院くん」
「あ、うん。できたよ」
「よし、では学校に戻ろう。あと、マニュアルさんや他のサイドキックの方々にも挨拶していかないとな!」
「うん」
飯田くんに促された私は、まとめた荷物を持って部屋を出た。本当に濃厚な1週間だった。気が狂いそうなほど目まぐるしく過ぎていった。
「短い間でしたが、お世話になりました」
「いや、むしろなんか申し訳ないよ…まさかこんな事になってしまって、キミたちに何も教えてあげられなかった。」
「いえ…そんな事は…」
「まさか君が、あのパヒュームロックさんとエンジェルスターさんの娘さんだったなんて…気づけなかった俺にも責任はある…インゲニウムも、ブロッサムのご両親も本当に素晴らしいヒーローだったよ。ヒーロー殺しと関わったことで、色々な気持ちが湧くかもしれないが、自分を責めないでこれを糧に立派なヒーローになってくれ」
「「はい!」」
私たちは深々と頭を下げると、駅向けて歩き出した。この1週間、本当に濃厚だった。自分が知らない自分を知ることができたし、改めて仲間の大切さを知った。この右手の怪我は、決して無駄じゃなかったと将来思えるようになったらいいな…
「四楓院くん」
「ん、なに?」
突然飯田くんが足を止めた。私も足を止めて振り向く。
「…キミのご両親が、かの有名な夫婦ヒーローとは知らなかった…この事を他のみんなは知っていたのか?」
「あ…えっと、名前まで知ってるのは勝己くんと相澤先生くらいかな…デクくんにも名前こそ出てないけれど、ヒーローオタクの彼の事だから気づいてると思う」