第53章 Interlude!
今日は明電高校の卒業式の日。三年前に入学してきた少女達も今や胸には赤い花が輝いている。
「豪炎寺先輩ー!卒業しないでー!」
イナズマジャパンが今年もFFHIで優勝した事により、サッカー部の人気も絶頂だった。
「相変わらずFWは人気ですね?」
「乃愛」
少し皮肉を言うかのような言動である。だが、顔はとても晴れやかで迷いや悩みは一切ないようだ。
「せんぱーい!第二ボタン下さーい!」
「ほら、言われてるよ?あげなくて良いの?」
「これはお前のだろ」
そう言っては少し雑にボタンを取って、傍にいる少女へと手渡した。
「あ、ありがと…」
「あ、乃愛ちゃん照れてる〜!」
「うるさい!」
帰国子女である藤色の髪の少女も満更でも無さそうに喜んでいた。
「瑠璃はこの前の大会でも優勝しちゃったからね」
「しちゃったって、何かやだな〜!努力の賜物ですぅ」
「頑張ったね」
「うん!」
良い様に手懐けられている様にも見えるが、これでも恋人同士である。だが、それもこの春迄で、高校を卒業してすぐに結婚する予定らしい。
「やっぱり、瑠璃ちゃん変わったよね」
「ヒロトがすっかり兄だな」
「あはは…」
スペクトロライトの長い髪を靡かせて、其々の様子を見守る少女もいた。そして、その傍には相槌を打ちながら、同じく見守る少年が一人。
「大分髪が伸びたな」
「個人的にロングが好きで…」
「似合っている」
周囲の人に見られているのにも気付かずに、戯れあっている少年少女も、今年の春に結婚する予定だ。
「案外高校三年間も短かったなぁ」
「年を取った証拠だな」
「何かそれお爺さんみたい…」
「それ、瑠璃が言えないと思うけどな」
「結構バッサリ…」
「まぁ、ヒロトだからな」
六人の少年少女は空を仰いだ。桜が咲くのはまだ先の季節のため、若干物悲しい光景でもあるが、彼らの表情によってそれ程寂しくは感じない。
「よし…皆でパーティしよ!」
「良いねぇ!」
「何処でやるんだ」
「それは…鬼道家しかないよね。スペース的に」
「は…?」
「今日位は良いんじゃないかな?」
「という訳で!私達は買い出ししてくるから、君達三人はそっちの準備宜しく!」
「え、ちょっと⁉︎乃愛ちゃん⁉︎」
強引に二人の少女の腕を引っ張って元気に街へ駆けていく。残された少年達は唖然としてその場に立ち尽くすのであった。