第4章 Shoot! 〈天晶 瑠璃〉
『おじさん…ありがとうございます』
「名刺、貰ったんだろう?儂が連絡しておこう。明日の放課後にも体験に行ってみるといい」
『はい!』
認めてもらえた。バレエを、もう一度。あの日から止まった時間が、また動き出す。
ーー次の日
「おはよう。天晶さん」
『お、おはよう』
「どうしてそんなに怖がるんだい?」
『え?怖がってる?』
「少なくとも僕にはそう見えたけど」
『いやぁね。昨日の夜ちょっと泣いちゃったから、目が腫れてないかなって思ったんだけど』
「全然大丈夫だよ。昨日と同じ目をしているよ」
『今日、バレエスクールに行ってみる事にしたんだ』
「へぇ…」
なんか含みのある言い方だな。まぁ、昨日話してみて何か裏にありそうな人だとは思ったけど。
「帰りは僕が送っていくよ」
『今日から体験入部だよね?遅くなっちゃうよ』
「どうせ五時半までだからね。君はもう少しかかるだろう?」
『だけど…』
「気にしなくて良いよ。初日から何かあったら困るだろう?」
『わかった。連絡先教えてくれる?』
「もちろんだよ」
スマホを出してラインを交換した。なんだか今日のヒロト君はゴリ押しスタイルだなぁ。まぁでも、一人寂しく帰るよりは全然良いや。
「君のバレエをもう一度見てみたいな」
『大会、出てみたいな。その時になったら呼ぶから、見に来てね』
「勿論だよ」
『昨日のヒロト君のおかげで目が覚めた。ありがとう』
「…!」
『どうかした?』
「い、いや、なんでもないんだ」
「皆、今日は体育館に集合だから、そろそろ移動してね」
「行こうか?」
『うん!』
昨日の、あの瞳は何だったんだろう。今日はまた違った瞳をしてる。まぁ、気にしないのが一番か。
『私、ヒロト君のサッカー見てみたいな』
「うん。サッカーの大会の時には呼ぶから。見に来てほしいな」
『勿論!絶対見にいくよ!』
「それにしてもオリエンテーションって何をやるんだろうね?」
『うーん、猫探し?』
「その考えは何処から…?」
あれ、私おかしい事言ったかな?でも、乃愛ちゃんや星羅ちゃんにもよくそれは違うって言われるんだよね。うーん、何が違うんだろう。
「あはは、君は面白いね」
『うーん、そう?』
「君のその独特の考え方は一等面白いよ」
なんだか、ヒロト君の事がわかってきた気がする。この人、本当は脆い人なんじゃないだろうか。