第31章 またね
船にしがみついてよく探そうとしているルフィ。私もずっとそこにいたが、どう見てもあのキレイな水色は見当たらない。これは諦めて出航してしまったほうがいいのかな…
「諦めろルフィ…おれ達の時とはワケが違うんだ。」
そうだよね、王女だもんね。アラバスタに必要とされている人だし、いなくちゃいけない人だもんね。ルフィも渋々納得しきれてないような顔だけど、出航することに反対もしなかった。陸から離れていく、これで砂の国ともお別れだ。その時…
「みんなァ!!!」
声が聞こえて振り返る。そこには…キレイな格好をしたビビと、カルーがいた。そっか、式典の格好をしているんだね。カルーの背中には電伝虫が乗っていて、そっから放送をしていたんだ。
「ビビ!!!?ホラ来たァ!!!」
「船を戻そう、急げ!!!」
「海軍もそこまで来てるぞ!!!」
しんみりとしていた船に明るさが戻った。ビビとカルーが仲間に入って一緒にまた冒険できると喜んだ。だけど、次に聞こえたビビの言葉は違った。
「お別れを!!!言いにきたの!!!」
「!?……今なんて…!?」
別れ。無理か…一瞬だけ、ビビの気が変わって船に乗ってくれることを期待したけど。ビビはカルーの背中にある電伝虫から受話器を取り、話しだした。
『私…一緒には行けません!!!今まで本当にありがとう!!!』
受話器越しに聞こえるビビの声はしっかりしていて、私達は呆然とその言葉を聞いていた。海軍が近づいてきていることも忘れて。
『冒険はまだしたいけど、私はやっぱりこの国を、愛してるから!!!!ーーーだから行けません!!!』
「………そうか!」
気持ちは同じだ。ビビだってまだ私達と冒険をしたかった。だけど、それは叶わないことで…ビビの声を聞いてこれまで行ってきた島や会話が走馬灯のように流れてきた。私達は、短い時間だったけど大きな絆で結ばれた。これはビビにとっても私達にとっても大事なもので。