第4章 注文はパンとレッサーパンダを
平日欠かさずバラティエに通い続けてから、気がつけば半月が経とうとしていた。
偶然と言うべきか、それとも運命と言うべきか、その日ローは願ってもない申し出を受けることとなる。
学校の昼休み、今日は天気が良く涼しかったので、ローはベポたちと共に昼食を屋上でとることにした。
ローの昼食は毎日自作の弁当である。
朝から弁当を作るのは手間だが、同居人のコラソンの分を作らなければならないので、二人分作った方が効率が良い。
弁当作りは強制されているわけではないけれど、コラソンに昼食を任せると、ドジっ子の彼はパンが食べられないのにピザの出前を取ったり、間違えて激辛カレー店に入ったりするので、安全のためにローが用意をする。
他の面々は弁当だったり、学食だったりと日によって異なる。
学食の場合はローも食堂で弁当を食べるが、今日は屋上に決めたので、弁当を持参していないシャチは購買にパンとおにぎりを買いに行った。
「……遅いッスね、シャチ。」
「放っとけ、俺は寝る。」
早々に弁当を食べ終えてしまったローは、柔らかな日差しに誘われてフェンスに背を預けた。
すると屋上の扉が音を立てて開かれ、息を切らしたシャチが戻ってきた。
「わりィ、遅くなっちまった!」
「ほんとだよー。おれたち、もう食べ終わっちゃったから。」
「悪いって……。あー、キャプテン、昼寝前にちょっとお願いが!」
「……あ?」
すでに微睡んでいたローは、昼寝を邪魔されて機嫌悪くシャチを睨む。
「睨まない、睨まない。……実はそのぅ、合コンに――」
「行くわけねェだろ。」
「ひどい! 最後まで言ってないのに!」
最後まで聞かなくても、シャチのお願いはだいたいいつも同じようなものだ。
くだらない発言で邪魔されたことに腹立ちつつ、ローは再び目を閉じる。
「懲りないねぇ、シャチ。今度はどこの子?」
「スペード高校の子。」
ローの脳裏に見慣れた制服姿の女が浮かび、ぱちりと目蓋を開けた。