第7章 トラ男とパン女の攻防戦
注意深く、少しだけ怖々とした手つきでローの指先が押し進んでくる。
気を抜けば、がむしゃらに求めてしまいそうだと己を律しているローの指が。
「ん、んん……ッ」
「辛いか?」
「だい、じょぶ。」
辛いというより、異物感に慣れないだけ。
温度差がある指と内側の壁が触れ合って、しだいに同じ温度になっていく経過がとても奇妙だ。
ローの指が第二関節まで沈むと、その奇妙な感覚が顕著になった。
侵入した指は無機物ではないから、ローが気遣っていても時折ぴくりと動く。
その僅かな振動が、目覚めかけたムギの官能を激しく揺さぶった。
「ん…く……ッ」
「辛いか?」
もう一度尋ねられて、ムギは首を横に振った。
辛いといえば、辛い。
でも、それは決して痛みからくる苦しみではなくて。
蕩ける花芯がぐつぐつ疼く。
その爪で、もっと奥の方を掻いてもらいたいようなもどかしさ。
気を抜けばなにかが漏れてしまいそうで、下腹部にぎゅっと力を入れる。
そうやって力むと蜜路も狭まるようで、強張ったローの指が動きを止めた。
「きつい、力を抜け。」
「ふ、あぁ……ッ」
指を入れるのなら、早くそうしてほしい。
けれども、そんな要望を言葉にできるはずもなく、ムギの口からは苦悶に満ちた吐息と艶めかしい声だけが溢れた。
「くそッ、お前……普段は可愛くねェセリフしか吐かねェくせに……!」
まるで、今のムギは可愛いみたいに言う。
羞恥に耐え、未知なるもどかしさを堪えるムギは可愛いもなく、ただの痴態を曝しているだけにすぎないのに。
なにかを漏らしそうな衝動を身の内から逃しながらどうにか力を抜くと、ローの長い人差し指がようやく身体の中に収まった。
あの美しい指が根元までずっぷり埋まっている様子を想像したら、それだけで燻る熱が弾けそうになる。
(終わっ…た……。)
永遠かと思われるほどの長い苦行に耐え、無事ゴールにたどり着いたムギは小さく安堵の息を吐く。
でも、ムギの考えは浅く甘い。
実際には、スタートラインに立っただけ。