第11章 「ノビル/セイヨウカラシナ」
リヴァイはさやかの様子を
見ながらゆっくり手を離し、
手振りでしゃがむように指示した。
ふと気がつくとさやかの
背中側に手が回り、
いつでも支えられるように備えてある。
「膝突いたほうが安定するぞ。」
少し過保護だよ、
とは言えずにそのまま膝を突いた。
草の上だから汚れる心配もない。
そしてリヴァイもさやかの
そばに片膝を突いてしゃがんだ。
『それでどれなの?』
ロゼット状のものから茎状のもの、
様々な形と色合いの緑が
競り合うように芽を出して
さやかにはどれとどれが
同じかすら分からない。
「これだ」
リヴァイは手元にスッと細長く
伸びている草をつまんだ。
細い葉は先が尖っているが固くはなく、
むしろあまりコシがない感じだった。
ある程度伸びると
まっすぐ立てずにうねるような。
見慣れるとあちらこちらに
まばらな群生が見つかる。
『これ、摘めばいいの?』
リヴァイがさやかの問いを聞くと、
黙ってスコップを取り出した。
さやかはもう
持ってきたことも忘れていた。
『え、掘るの?』
「ああ、気長に掘るぞ」
答えたリヴァイが草の根元に
スコップの先端を挿し、
スコップをグッと押した。
掘る部分が柄の付け根まで一気に潜る。
それからリヴァイは柄を
テコの原理で土ごと草を掘り起こした。
周囲の何本かをその一回で
まとめて掘り起こし、
リヴァイは慎重に土を手で除きながら
草の根元を掴んでゆっくり引き抜いた。
途中で何度か手を止めて
土をさらに掘るのは、
根が切れそうな感触を察して
深さを増しているらしい。
ようやく掘りあげた緑の株から
土を丁寧に払うと、
根の先が白い玉になっていた。