第10章 「深い意味はない」
そして出がけに聞かれた。
「自転車持っていくか?」
自分でも意外なことに、
先日は結局歩ききってしまった。
『前と同じくらいの
距離なら結構大丈夫かも......』
「じゃあ歩いて行くぞ」
リヴァイはそう言って先に靴を履いた。
頑丈さが唯一の取り柄のような
ワーキングブーツである。
脱ぎ履きが面倒くさそうだなと
いつも思うが、その無骨さゆえに
行き倒れるまで
歩き続けることができたのだろう。
『靴、重そうだよね。疲れない?』
「慣れたし、頑丈なほうが
壊れる心配しなくて済むからな。」
実はこっそり足を入れてみたことがある。
さやかには足を持ち上げることも
大儀になるほどの重さだった。
でも男の人だったら
これくらいで平気なのかな。
さやかのほうは軽さと
適度なファッション性が
取り柄のスニーカーだ。
部屋を出ると空気はまだ涼しかったが、
陽気はすっかり春らしかった。