第5章 「気持ちが傾く」
リヴァイが同居人になって
一ヶ月ほどが過ぎた頃だったろうか。
季節としては三月中旬。
その三月、さやかの運は散々だった。
主に仕事において。
不可抗力の重なったミスを連発して、
いつの間にやら
犯人がわからない仕事のミスまで
さやかのせいになっている。
私じゃありませんなどと言っても
課内の輪を乱すだけなので
『すみません』と頭を下げる。
腹の中では
私じゃないのにと思いながら。
よくあることだ。
調子の悪い奴を見つけたら、
ついでにこれもと自分のチョンボを
こっそり背中に載せにくる奴は
どこにでもいる。
リカバリー残業をして、
家に帰ってチャイムを鳴らす。
さやかだと分かるように
決めたリズムで。
鍵を出さなくてもドアが開くことが
せめてココロを慰める。
「......ご苦労だったな」
リヴァイのねぎらいで糸が切れ、
玄関でリヴァイの背中に
両手を回して泣き出してしまうことも
一度や二度ではなかった。
「メシ作ってあるぞ。
まぁ、靴脱いで上がれ」
言いつつリヴァイがさやかを
胴に抱きつかせたまま腕を伸ばし、
玄関の鍵を掛ける。
「メシ温めるから
さっさと着替えてこい」
言われて寝室に籠り、
部屋着に着替える。
それから洗面所で簡単に洗顔だ。