第17章 「増えた鍵」
〝中坊のエロ本の隠し場所〟
と言われた図鑑の隠し場所が
見つかってからは、
開き直ってリヴァイの前でも
堂々と図鑑を眺めるようになった。
「面白いものでもあったか?」
夕飯の後片付けを済ませた
リヴァイがベッドに寝っ転がっていた
さやかの頭越しにひょいと
図鑑を覗き込んできた。
『んー』
と応えながら首を傾げる。
『何かこう、あたしでも名前が
分かるような〝山菜〟って、
あんまりこの近所にはないんだなぁって。
フキ系くらい?』
「少し離れればワラビなんか
けっこうあるんだがな」
『えっ?!』
さやかは思わず顔を上げた。
ワラビなら有名どころで
さやかにも名前が分かる。
『どこ?!』
「いつも行く川があるだろ。
あれを超えてしばらく行くと、
山を拓いて造成したベッドタウンがある。
その近辺まで行くと道端にせよ
空き地にせよ生えてるぞ」
『しばらくってどれくらい?』
「徒歩だと三時間だな」
『えー、無理!』
悲鳴を上げたさやかは
起き上がってリヴァイを見上げた。
『ていうか、いつも
そんなところまで歩き回ってるの?!』
「バカ言え、自転車でも
片道一時間はかかるだろう。
俺がここで行き倒れるまでに
山越えでそこの道を通っただけだ」
『そんな行き倒れ寸前の状態でも
植物のチェックはするんだ?』
半ば呆れて訊くと、
リヴァイは苦笑しながら答えた。
「確認するまでもねえ......
目に入ると勝手に識別しちまう、木とかな。
特にワラビなんか
枯れたシダの形に特徴があるからな。
ワラビが生える環境なら
この辺りには何が生えてるか分かる。」
『何かその、植物学?とか
勉強してたりしたの?』