第1章 恋して、ヴァンプ
「翔琉、まって……………っ」
「待たない」
離れた唇が首筋に触れると。
ビクって反応する体。
「大丈夫、さすがに噛まないよ」
「え?」
「次噛んだら凛ちゃん、死んじゃうもん」
「……いいよ」
血がなくなったら。
輸血でもしてもらう。
未琴の家病院だし、なんとかなるよ。
ならなくても。
レバー、食べるし。
だから。
「好きなだけ飲んでいいよ」
「凛」
「他の子の血、飲まないで」
「………うん」
我ながら、こんなに独占欲強かったのかとほんと、呆れる。
だけど仕方ないじゃない。
嫌なものは、嫌なんだ。
「ごめん凜ちゃん。もう、余裕ない」
そう言って伏せた瞳を、開いた翔琉の瞳は。
また、深紅の、赤。
「え」
噛み付くように重なった翔琉の唇。
とろりと上から流し込まれるのは、翔琉の甘く、濃密な唾液で。流し込まれたそれを受け入れる以外に術もなく、組敷かれたままに、躊躇無くそれを飲み込んだ。
コクン、て。
喉を鳴らした、瞬間に。
「…や、あ……っああああ……っ」
途端に襲いくる、あの感覚。
ヴァンパイアの体液は、媚薬。
心から愛する相手なら、それはより強くなる。
ドクン ドクン ドクン
体中の血液が沸騰したかと錯覚するくらいに、熱い。
「や、やだ………っ」
怖い。
これ以上快楽に飲み込まれたら、戻って来れなくなりそうで。
必死で翔琉の背中にしがみついた。
「や__っ!?___ッッあ、ああっっ!!」
その、瞬間。
翔琉は遠慮なく一気に、あたしを奥まで貫いたんだ。
「凛ちゃん」
「は…っ、はぁ、はぁ……っ」
「大好き」
顔をあげた翔琉の瞳の色は。
キレイな血液みたいな深紅の瞳。
最後に見た紅い色は、翔琉の瞳だったか、血液だったか。
とにかくそれを最後に。
また、意識は途切れた。