第78章 二人の夜

Side.Marco

アンが来るだろうと思い、先に風呂に入った。もう少ししたらかねい…なんて思いながら頭をふいていたら、声がかかっただけで中に入ってくるアン。

『マールコ、入るよ〜』
「お前な…ノックぐらいしろよい」

服もまだ着ておらず、頭にタオルがかかったまま…普通ならこの状況は襲われるよい。

『いや、いつもか…』
「何一人で言ってんだよい？」

ゆっくりとアン近づいていくと本人は気付かずにこちらを振り返って、親父様のマークに激突していた。

「おっと…」
『いた…』

あァ…そうか…

「悪いねい…右目のこと忘れてたよい」
『…』

アンはこちらを見たまま固まっていた。しばらく見ていると急に顔が赤くなった。

『ッ////』
「アン…？」

なんだ？そう思って、首を傾げているとまた反応がなくなった。
何をそんなに見てんだよい？無意識に目の先を覗こうとしたら近づきすぎたようだよい。

「アン？」
『マ、マルコッ！！近いッ！！』

あまりの近さに驚いたのか手で押し返されてしまった。

「くくく…顔が真っ赤だよい」
『…む』

みるみる赤くなる顔を指摘すると唇を尖らせて怒ってしまったようだ。

「怒ってるのかよい？」
『いいから、不死鳥になってよ』

怒っているような声ではないが、少しだけきつい言い方に“からかいすぎたかねい”と不死鳥の姿に獣化すると大きな目はキラキラと輝いていた。

「まだ、怒ってるかよい？」

この姿で聞くと、すでに機嫌を良くしたのかニコニコしていた。

『全然！マルちゃん、こっち！』

ベッドの上に座り膝を叩いたので、その上に乗ってやると嬉しそうに触り出した。

『あー、可愛い〜！モフモフ〜！！』

羽を痛めないように気を使ってるんだろう…優しく触られるその手にこちらまで気持ち良くなっていた。
「中身はおっさんなんだけどねい」
『マルコはおっさんじゃないよ。』
「そうかよい？」
『うん。マルちゃんはエースみたいに暖かいね』
「…よい」

エース…みたいかよい…
だんだんゆっくりになっていく手、その暖かさに眠たいんだろうと思い、眠るように言葉をかけた。元の姿に戻りベッドに倒してやる。

『また明日…』
「おやすみだよい」

ゆっくりと閉じていく目に額にキスを落として、布団をかけた。