第11章 急務の呼吸
「か…は……」
「この出血なら、人の血肉が欲しくなるのは時間の問題だ。先ほどからお前は怪我の治りも遅すぎる…」
「……私に…仲間を…食わせる、気か…」
「そうだ…そしてその仲間とやらに殺されるといい。それが裏切り者にふさわしい末路だ」
そう言い切った直後、体を貫通していた腕を思い切り引き抜かれる
同時に大量の血液が辺りに広がる
…これは…ちょっと、出血が過ぎる…
あまりの激痛に意識もふらつく
手に突き刺さっていた刀は、先ほどの衝撃で運良く外れたため、その場にしゃがむように倒れこむ
そして、その感覚はやってきた
喉が乾く
目が冴える
嗅覚が鉄の匂いを捉える
…急激な飢餓状態
千年前、蔵の中で耐え抜いたあの激しい飢餓状態が脳裏にちらついた
そんな私の姿を嬉しそうに見下す上弦の参を尻目に、心臓部分の服を握って苦しみに耐える
大丈夫…大丈夫…
そう自分に言い聞かせるけど、症状は悪化していく一方だった
このままじゃ相手の思うツボだ…
私は…
「…人は…絶対、食べない…ッ…」
腹部から血がとめどなく溢れるが、そんなの御構い無しに横に落ちていた折れた刃を手に取る
ここで我を失って悪鬼に成れ果てるくらいなら
答えは決まっていた
手に持った刃で、思い切り頸を…切り落とした
「……なんて醜いことを…」
上弦の参の、その言葉を最後に
私の首は地に落ちた