第7章 目覚めの呼吸
「うっ……んん…?」
「おはようございます。お目覚めですか?」
目を覚ました
夢の中でも寝ていて、現実でも寝ていただなんてなんて贅沢なだろう…と思いながら上半身を起こす
どうやら飲んだ毒は解毒できたみたいだ。体に異変は感じられない
「何か効果は現れてたかな?」
「ずっとうなされていましたが、後半からはその様子も消えていました。一種の幻覚症状のようなものが見受けられましたね」
「幻覚か…それであの夢ね」
あの暗い監禁生活が、この千年の間で一位二位を争うくらいの暗い出来事だった
薬で誘発されて思い出したとはいえ、鬼にされた直後のうっすらと忘れていた記憶が戻った
だとしたら、記憶のない鬼の拷問などに使えそうだ
「懐かしい夢でも?」
「うん…私が鬼殺隊に入る頃の記憶を見たんだ…本当に懐かしい記憶だよ」
結局、私が初めて条約を交わした当時の産屋敷家当主が生きている間に、私は自分の名前を思い出せなかったけど…
千年を過ごすうちに断片的には記憶を取り戻せていた
医者の娘だったらしい。とか、実は料理が得意だった。とか…
まぁ、思い出したと言ってもその程度のことしか思い出せてなくて、肝心なところはまだ忘れたままだけど
「…とりあえず実験は終わり…かな?そろそろ日も暮れてくるし、任務に行く用意をしなきゃ」
「ああ、そういえば。実験最中に鎹鴉伝いで伝言が来ましたよ」
「伝言?…誰から?」
「不死川さんから、久しぶりに手合わせをするよう言伝が来てましたよ。今日こそはその首切り落とすって物騒な言葉つきで」
「うえぇ…それは骨が折れそうだなぁ」
そう嘆きながら、寝間着をたたんで隊服に着替える