第3章 初めての笑顔
一週間後の同じ日、同じ教授の講義。
俺は、また教室に一番乗りだった。
「すみません、隣いいですか」
後ろから声が聞こえる。
彼女だった。
「どうぞ」
内心俺はホッとした。
ペラッ、カリカリ。
教室には先週のように俺たちの紙を捲る音、ペンを動かす音だけが響いている。
「あのっ!」
俺は思いきって声を掛けた。
「はい?」
彼女はキョトンとした顔をしている。
「えっと、あのこれ!」
勢い良く消しゴムを差し出した。
「これ…私のだ。でもどうして…」
そりゃあ普通驚くよな。知らないヤツが自分の物を持ってたら。
「せっ先週も隣にいたでしょ!帰りに忘れて行ったから渡そうと思ったんだけど、探してもいなくて…。だから今日会えて良かった!
あっでもけして他意があっての行動ではないから!」
一気に喋りすぎて、俺は肩で息をした。