第1章 プロローグ
何度も何度も過去へと戻る、彼女の幸せを一番に考えた私の途方もない物語であるーー……
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何度も目の前で彼女が断罪され処刑された、濡れ衣を着せられた彼女は悲しげな目をしてから穏やかに笑うのだ。泣き崩れる私は墓場の前で強く誓う、あぁまただ、また愛する彼女を守れなかった。今度こそ…彼女が幸せな世界を私が叶えて上げなければ。
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墓場で出会った魔法使いは、私の頬を優しげに撫でた。普通ならば知らない人に話し掛けられたら身構えるはずが、私は縋るように無力だと子供のように令嬢とは程遠いような泣き方で伝えた【泣かないで…もう大丈夫、私が力になろう】と目を細めた魔法使いは私を抱き締める。例えそれが悪魔に魂を売った行為だったとしても、私は彼女を助けたいのだ。
「タイムリープする力を貴女にあげよう…だから貴女の、これからの人生や過去の人生。全てを私にくれないかい?」
「彼女が助かるのであれば…私は貴方に全てを捧げてもいい。だからお願いします…彼女を助ける術を下さい」
「……契約成立だ。頑張りなさい、お嬢さん」
銀色になびく長い三つ編みをした美男性の魔法使いが泣き腫らした私に話し掛けている。澄んだ水色の瞳が細められた。ゆっくりと全てがスローモーションに見えて、私の頬とアゴを持ち上げた魔法使いの彼は愛おしそうに私の唇にそっと口付けを落とした。
そして私はこの世界に【さよなら】を告げた。