第2章 想定外

照明で明るいままバスローブを解かれ、素肌が顕になる。
春くんの唇が額、頬、耳と降りて来て、身体が小さく震える。
時折肌を舐められて、漏れそうになった声を飲み込んだ。


｢渚さん、我慢しないで。
俺声我慢してない人の方が好きだよ｣


耳元で低く、甘く囁かれる。
そんな声知らない。
その顔も知らない。
だってついさっきまではニコニコ笑ってて可愛かったのに、今はまるで普通のオトコ。


｢やぁ……｣
｢へぇ、首弱いんだぁ｣


首筋に触れた舌。
気を抜いていた時だから、声が漏れてしまった。


｢可愛い……。
ね、渚さん……噛んで良い？｣
｢噛む……？｣
｢そ。噛みたい｣


熱の篭った目で私を見つめ、手で首筋をなぞる。
その動きがゾクゾクする。


｢……いい、よ｣
｢やった、ありがと、渚さん｣


普段ならこんなこと許可しない。
首なんて噛まれたら痛いだろうし、そもそも痕が残りそう。


｢っ……｣
｢はぁ……｣


首筋を舐められて、熱い息が掛かったと思えば、鈍い痛みが走った。


｢っ、ん……や……｣


歯が肌に食い込む度に背筋が震える。
普通に自分で噛んだ時とも、元彼に噛まれた時とも違う。
身体の奥に感じるような、何か。
これ、やばいかも。


｢や、春く……痛い……｣
｢我慢して｣
｢やだ、痛い……ん……｣


口では痛いと言いながらも、身体は快感を覚えている。
痛いのに気持ち良い。
こんなの知らない。
自分の知らない感覚に小さな恐怖を覚え、背中にしがみついた。


｢怖い？｣
｢こわ……｣
｢大丈夫、怖くない。
俺が居るから……ね？｣


目を見つめられ、頬を撫でられると安心する。
心地が良い。
もっとして欲しい。