第1章 カラダから始まる訳がない
「上がったよ、お姉さん」
「おかえり」
毎回思うけど男の人のシャワーって早い。
若干癖のあった髪は濡れているせいでストレートになっていて、その毛先からは水が滴り落ちる。
「ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃうよ」
「お姉さんが拭いて?」
「もう……」
洗面所からタオルを1枚持って来て、ベッドに座らせた彼の髪を拭く。
成されるがままなのが可愛い。
ちょっと子犬みたい。
「まだー?」
「もうちょっと」
「早くお姉さんとシたいよー?」
「我慢!」
「えー……」
ベッドに座りながら、少しソワソワし始める。
隠せないのが可愛い。
やっぱり若い子相手なのは良いな。
硬いし、回数出来るし。
まぁ、経験は……ね、仕方ないし。
「お姉さん名前なんて言うの?」
「知る必要ある?」
不必要に情報を教えれば、いつか自分に返って来る。
1度それで痛い目を見たことがあるから学んだ。
自分の情報は最低限。
それが一夜の付き合いでのルールだ。
「お姉さん、より名前で呼んだ方が興奮するでしょ。
まぁ本名じゃなくて良いし、別に教えなくても良いけどさ」
「……渚」
「渚さんね、おっけー。
俺はハルって言うんだ」
「春くんか、よろしくね、今日だけだけど」
「うん、よろしくー」
髪を乾かしていた手は止まり、バスタオルはベッドの下。
「渚さん……もう、良い?
十分我慢したと思うんだけど」
ギラつく目。
その目が何を求めているのか、知らない程ピュアな私じゃない。
「良いよ、好きにして。
それとも私がリードする?」
「……歳下だと思って舐めないで。
ヒイヒイ言わせてあげる」
「楽しみにしてる」
春くんの髪を撫でたのを合図に、ベッドに押し倒された。
強引だけど、倒れる時に頭をガードしてくれる。
優しさを持った強引さ。