第2章 after:Sunshine Girl
時は流れて、あのデート体験から数ヶ月後。
私は自室でくつろぎながら、無心でスマホを操作していた。
「…ねぇ、さくら」
「待って、今翔くんのツイートにリプしてるから」
「俺はここにいるのに…」
「そういう問題じゃないの!…よし」
テーブルにスマホを置いて、私を後ろから抱き締めた状態の翔くんの頭をよしよしと撫でる。
「お待たせ。ほら、拗ねないで?」
「拗ねてるわけじゃないけどさ…さくらはホント徹底してるよね」
翔くんと付き合い始めてからも、私はSNSでの振る舞いをまったく変えなかった。
翔くんのことは今まで通り「朝比奈くん」と呼び、ブログやツイートにはすぐ反応し、グッズを購入し、同担の友達とライブやイベントに参加する。
「ライブもイベントも関係者席に入れるし、グッズもあげるのに」
「それじゃ意味ないの。翔くんは私の彼氏だけど、それ以前に"推し"なんだから。恋人になったからってファンをやめたわけじゃないんだからね!」
自信たっぷりに言い切ると、翔くんは盛大に溜息を吐いて私の肩に頭をぐりぐりと押し付けてきた。
少し猫っ毛気味の柔らかな髪がふわふわと頬を掠めてくすぐったい。