第5章 「逃げ道」
数十分…
「ついた…音駒…」
体育館のドアを元気に開ける。
やっぱギャラリーついてる。
灰羽くんのかな、かっこいいもんねあの子。
クロさんとか案外ファンいそう。
「待ってた…大変だったね。」
音駒にはあらかじめ言ってある。
マネ代理で入りたかったから。
「んじゃスポドリ作ってくれ。」
え、なんで?という女子生徒がいた。
顔目当てでマネになろうとして断られたらしい。
正直ザマァ。
…烏野も、断ってくれたらよかたのに。
いや何思い出してんの、もう忘れて、他人なんだから。
自分に言い聞かせ、仕事にとりかかる。
「ほんっと手際良いね~」
「そーですか?」
夜久さんは私より少し大きいので屈んで見ている。
慣れてますから。
言おうと思ったのに、出てこない。
代わりに出てくるのは、
昨日流したものとは違う、悲しい涙。
手元にポタポタ落ちる。
「な、れて…」
必死に“慣れてますから”って、
絞りだそうとしても出てこない。
「ムリに言わなくていい。 何で慣れたか思い出しちゃう…」
「そうだよ」
「まぁそういう事だよっ!」
みんなの優しい言葉が、胸に染みる。
「早く慣れて、みんなの足ひっぱんないようにって、頑張って覚えて、それで、最高のチームになって、まだ飛べるって証明して、それで、それで、」
溢れる本音と悲しい涙は止まらない。
それでも、
優しく受け止めてくれる。
そんな仲間がいて、
少しは救いがいがある世界なのかもしれない。
* * * * *