第10章 交差するそれぞれの思い.
ミツバが目を覚ました日
病院の屋上には、二つの影があった
「…で?テメェはなんでこんなとこにいるわけ?」
「ああ?どこでなにしようと俺の勝手だろ…」
「まァな、俺には関係ないことだけど。でもよォ…今ばかりはここじゃねェだろうよ、お前のいるべきところはよォ」
「……」
土方と銀時の会話の隙を見計らい、屋上に上がってきた未来が声をかける
「…土方さん」
「なんだ、お前もそいつと同じこと言いにきたのか?」
「いえ…。さっき総ちゃんが帰りました。"どっちに転ぶにしても、ケジメつけろ"…そう言付かったので、伝えに来ただけです」
「……」
返事をしない土方に対して、お手上げだと言わんばかりに呆れたように肩をすくめる銀時
未来はそんな銀時の前を通り過ぎ、屋上の手すりに肘を置きタバコを吸う土方の隣に立ち、遠くの景色を眺める
「ふう…」
土方は静かにタバコの煙を吐き出した
「早ければ、二週間後には退院できると思います」
隣に立つ土方を横目で盗み見る
「土方さんたちが…」
土方と銀時は黙って未来の話を聞いた
「土方さんや総ちゃんたちが江戸にやって来た頃、私、ミツバちゃんのところに一度行った事があるんです。ミツバちゃん、言ってましたよ。本当は寂しいって。でもみんなが頑張っていることを誰よりも知っているから、泣き言は言わないって」
感情の読み取れない土方の横顔
未来は、もうそれ以上何も言わず土方の隣から離れた
「馬鹿があれこれうだうだ考えても馬鹿は馬鹿のまんまだろ。そんなくだらねェことで時間無駄にするなら、惚れた女の一人くらい守ってみせやがれ、鬼の副長殿?まァ、俺には関係ないことだけど」
いつものような皮肉を吐き出すと、銀時は未来と屋上を後にした
「ちっ…偉そうに、お前はどうなんだっつうんだよ」
吐き出すタバコの煙は、土方の思いと似たようにモヤモヤと漂い風に溶けていった
「…ったく、今更どうしろってんだよ…」