第10章 交差するそれぞれの思い.
ミツバの容態は思いの外良くなく、翌日には入院することとなった
「よう、元気そうだな」
目の前に広がる天井をただぼんやりと眺めるミツバの病室へ見舞いに来たのは銀時だった
「ふふ、今日は体調が良いみたい。この間はごめんなさい」
「んなこと気にすんな。まあ、あんま無理はすんなよ」
「ふふふ。あの人も銀さんくらい優しかったら良かったのに…」
ベッドの上で起き上がり、ふっと寂しく笑うミツバ
「…今でも気になるか?あいつが」
「……っ。もうずっと昔のことなのよ。総ちゃんたちが江戸に発つ前の日、あの人に突き放されたの。
"待ってろ"って、たった一言…そう言ってくれれば、それで良かったのに…」
「それは無理だろ」
「え…?」
「"待ってろ"なんてテメェのことしか考えてねェ身勝手な奴が言うことだろ。"行くな"って引き止めるのは、ただの足枷にしかならねェ。それなら何も言わないでおくか、あえて突き放すかのどっちかしかねェかもな」
「…ふふ、似たもの同士なのね」
「あ?」
「ううん。あなたなら…、銀さんならどっちを選びますか?…やっぱり突き放す?」
「俺ァ言いたいこと全部飲み込んだ…。引き止めることも突き放すことも出来ないで、ただ見守ることしか出来ねェ。ただずっと待つことしか出来なかった。そしたら結果十年も経ってたよ」
自嘲気味に笑う銀時だったが、それを悲観することもなくどこか清々しい
「…とても大切な人がいるのね」
「大切…ねェ。そんな綺麗な言葉じゃ表せねェくらい大事な奴だ。…あんたにとっても同じなんじゃねェのか、あいつの存在は」
「…ふふ、私も全部飲み込みました。もういいんです、私のことは。ただ、好きになった人の幸せを今でも願ってるだけです」