第9章 交差するそれぞれの思い《回想》
もうずっと昔、暑い夏の日
静養と休暇を兼ねて、まだ幼い未来と両親は使用人たちを連れて、江戸から少し離れた避暑地へ出掛けた
未来はいつも屋敷の周りをひとりで散策し、夕方帰ってくる頃にはかすり傷や泥だらけになっていた
母親はいつも手を焼いていたが、江戸にいる時とは違い、無邪気に遊ぶ未来を優しく見守っていた
そんな未来には、そこで二人の友人ができた
使用人の目を盗み一人でやってきた川辺
緩やかに水が流れる川に足を浸け、涼んでいる子供が二人いた
総悟と姉のミツバだった
あっという間に打ち解けた未来たち
ミツバと総悟は、自然の中での遊びを色々教えてくれた
二人は姉弟で両親を早くに亡くし、少し歳の離れた姉のミツバが総悟の面倒を見ていた
そのせいか、総悟はいつもミツバから離れなかったが、毎日の様に遊ぶ未来にも少しずつ懐いていった