第17章 〜轟焦凍〜体育祭後
「轟くんもそう言うんなら」
「俺も華って呼んでもいいか?」
「うん、何か幼馴染以外に呼ばれるのは照れるなぁ」
そう言って華は照れたように笑う
「あ・・・あそう!そういえば私の友達が焦・・凍の事綺麗って言ってたよ」
照れた顔を誤魔化すかのように言いにくそうに名前を呼んでくれる姿に愛しさが込み上げた
「俺は華の方が綺麗だと思うけど」
「へっ・・!やだなぁ、焦凍でも冗談言うんだね」
慌ててブンブンと手を振る様子に真顔でじっと見つめればほんのり顔を赤くする姿にやっぱり好きだと自覚する
その笑った顔や赤くなる顔がずっとこちらを向いててくれたらいいと思う
爆豪や緑谷はこの気持ちが華から受けた個性だと言うが、俺はそうは思えない
こんなにすっと心の中に入り込んできて、これが個性でしたなんて思いたくない
「なぁ、お願いがあるんだけど」
「へっ?え?お願い?なに?」
両手で頬を包んで振り向く姿にも可愛いと思ってしまう。重症だ
「俺も弁当食いたい」
「へ?弁当・・?あぁっ今度作るって言ってたお弁当ね、もちろん皆んなで食べよう」
作るのは好きだから1人増えようが2人増えようが大差はないし、一緒にお弁当を食べたいと言ってくれるのは華にとって嬉しい事だ
「いや、そうじゃなくて、俺だけに作ってくれ」
「えっ、そ・・・それは別にいいけど・・・」
「ん、楽しみにしてる」
嬉しそうにする様子にまた鼓動が跳ねた
さっきからどうもこう、むず痒い 蓋をした感情を押し戻すかのように明るく焦凍に振る舞った
「それじゃあ、焦凍の好きなもの入れるよ。何が好き?」
「好き・・・・蕎麦?」
「お蕎麦かぁ・・・・・う〜ん、よし!任せて」
少し考えたように唸ると思いついたように声を上げた
「任せた、そんで作ってくれた弁当持ってあの中庭に行こう」
「中庭でお弁当?ピクニックみたいだね」
クスクスと笑う姿に自然と口元が緩む
今はまだこの空気が居心地がいい
あの2人の時間には追いつけないかもしれないなら同じように作ればいい
一緒に過ごしていく時間はまだまだ沢山ある
焦らなくていい、ゆっくりと今のこの瞬間を大事にしたいから
そう感じながら華の隣をゆっくりと同じ速度で帰路に着くのだった。