第16章 衝突
修兵の言い分は筋が通っている。おそらく彼の言う通りだ。図星を指されたも同然だった。
だからこそ、行き場のない怒りをぶつけたくて仕方なかった。
「…アンタ…ここが瀞霊廷じゃなきゃ斬魄刀抜いてるとこだ!」
何もかもの思考がぶっ飛んで、恋次は修兵に向かって拳を繰り出した。辺りで不安げに見守る女性隊士達から悲鳴が上がる。間髪入れず繰り出した拳は全て両腕でガードされてしまった。修兵は反撃する気はないようだ。動きを止め、こちらの出方を伺っている。
そこへ騒ぎを聞きつけた理吉が叫びながら走り寄り、恋次の腕を夢中で掴んできた。
「恋次さん!やめて下さい!」
「放せ理吉、巻き添え食らいたいのか!?」
理吉は感情のままに動く恋次を何とかなだめようと必死だ。
「どうして…何があったんですか!?」
「何でもねえよ、ちょっと世間話してただけだ」
困惑する理吉に修兵は普段通りの調子で応じたが、一方の恋次は明らかに様子がおかしい。
「何でもなくねえよ!オレはアンタぶん殴りてえ!」
「とにかく、このままじゃ二人とも罰せられますよ!」
体を張る理吉に続いて、傍観していた周りの隊士達も二人を止めようと手を貸し始めた。理吉達に羽交い締めにされながらもこちらを睨んでいる恋次を、修兵は静かに見つめ返す。
「…俺を殴ってどうにかなるのか?」
答えなど出てこない。恋次にとってはそういう問題ではないのだ。
「頭冷やせ」
「……畜生…」
ひと言残し去って行く修兵を前に、恋次は力が抜けたようにうなだれた。
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