第9章 1割のお礼
「あれ、ちゃんどうしたんだい?」
話しかけられて、出ていくのを遮られた。
『い、いえ、別に....』
「何かあったんだろう?今にでも涙が零れそうな瞳をしている」
『....え?』
自分では気づかなかった。ましてや、泣くことなんてなかった。
「話聞こうか?」
太宰にそう言われたが、話す事なんて無い。
けど、いつもふざけている太宰が真剣な真摯の目で聞くものだから、は小さく頷いた。
何故か太宰の部屋で話を聞くことになった。
少しずつだが、さっきの事を話した。
太宰は話を真剣に聞いていた。
途中に助言などをして、を勇気づけた。
休み時間が終わる時間が来ても、他愛のない話などずっとしていた。
時計の針は5時15分を指している。
礼を言って、探偵社に戻ろう。
立ち上がろうとするの手を掴む。
「まだ終わらないよ」
「まさかこのまま探偵社に戻れると思ったかい?男の部屋に入って、何が起こるか察せないちゃんじゃないよね?」
太宰は笑っているが、目は笑っていなかった。
「私じゃダメかい?」
寂しそうに言うが、は冗談だと思った。
けど、優しくキスをする太宰に困惑する。
『だ、太宰さん?』
唇が離れて太宰に聞くが、何も答えない。