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魔界皇子と魅惑のナイトメア

第4章 教え



「天月ちゃん、今日は一緒だね」

隣に座った葵が話しかけてきた。
彼女の顔には、天月さんの顔が見れて嬉しいと顔に書いてある。

「毎日朝昼に顔合わせてるでしょ。部屋同じなんだから」
「でも嬉しいよ。同じ人間界の仲間なんだから」
「ふーん」

授業と授業の休み時間の合間に、天月は図書島へ足を運んでいた。じっくり本を見て目に止まった本に手を伸ばす。じっと表紙を見ていると、静かな図書島に声が響く。

「ふふ。勉強熱心ですね」

横を見るとそこには、白髪の男性が立っていた。

「だ、誰」
「この学院の学院長ですよ」

優しげに微笑まれる。

「えーっ、あの怪しさたっぷりのーー!!?」

人差し指を白髪の男に向ける。

「あ……すみません」
「はい……怪しさたっぷりの学院長ですよ」

肩を震わせ笑いを堪える学院長を見つめる。

「どうしましたか?天月さん」

葵がずっと聞きたがっていた質問を投げかけてみることにした。

「帰る方法が知りたいんだけど」
「それはできません」
「……え」
「次元を超える魔法は誰でもできる魔法ではないのです。もちろん僕にも……」
「そう……ならしょうがないね」
「冷静ですね」
「そう見える」

気まずい沈黙が流れてしまい何か発しようと口を開くが、学院長の言葉に遮られた。

「それなら僕が君に教えてさしあげますよ。国語でも、社会でも、英語でも、魔法でも。埋め合わせになるとも思いませんが」
「あ、いえ、そこまでしていただくわけには」
「そうですか。それでは何か困ったことがあれば、遠慮なく言ってくださいね」
「有難うございます」

頭を急に下げた天月に戸惑いながら尋ねる。

「どうしましたか?」

きょとりと目を丸くさせて、困り顔の学院長を見つめて苦笑した。

「すみません。もう癖のようなもので」
「……癖、ですか」

図書島の中は静かで時より本のページをめくる音のみ聞こえるだけだ。

ほつりと学院長の溜息が聞こえて後ろを振り向いた。
彼の真っ白な服を見ていると、どうでもいい問いが口から溢れた。

「その白い服、食事する時大変ですね」
「……え?」
「ほら、もしソースとか溢したらシミになっちゃうじゃないですか」
「………え? ああ、そうですね」

そう言いながらふと微笑む学院長に小さく微笑み返した。

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