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魔界皇子と魅惑のナイトメア

第1章 拝啓赤き月へ


足を踏み入れた途端、食堂内にいた人たちがさざめきたつのを感じた。

「俺の案内は、ここまでだ」
「あっ、ありがとうございました。右も左もわからない状態だったので、助かりました。魔法の説明も理解はできなかったですけど、お礼を言わせてください。
「知識として得たものがないのに礼を口にするとは、偽善者だな」
「あはは。誰も偽善で損する人はいないですから」
「……はっ」
「…………」
「……後のことはこの男に聞け」

言いながら彼は、横を通り過ぎようとしている人の手をぐっと掴んだ。

「ん?おートア、もう飯は食ったのか?」
「ここで俺が食事をするわけがないだろう。Sランク専用のカフェテリアに行く」
「あはは。そうだったな」
「こいつらは転入生だ。任せたぞルゼル」
「おお!任された」

トアが去って行くのを目で追っていると、突如声がかかる。

「よっす!とりあえず、なんか食うよな」
「……」
「………」
「この食堂では、好きなだけ好きなもんで腹一杯にできるぞ」
「「……あの。その前に、よければ自己紹介を」
「おお、そうだな」
「私は、吉田葵といいます。あなたは?」
「俺は、リオ・ルゼル。Bランクだ。よろしくな」

無害百パーセントの笑みで言う男は、天月を見た。

「君の名前は?」

その瞬間、彼女の顔つきがより硬くなる。
庇うように葵はリオに笑いかけた。

「えっえーっと、彼女は天月です」
「そっか。よし、挨拶もバッチリってとこで食べるもん決めようぜ。ここはなんでもうまいから、全メニューいっとくかあ?」
「ごめん。調子悪いから部屋先帰る」
「あ、おい」

リオが止める間もなく、すたすたと食堂を出て行く。

「あの、リオさん」
「ん?リオでいいよ。俺も葵って呼ぶし!」

葵とリオは親しげに話しを続ける。

「あれ?リオ、さっきそこに山盛りになっていたサラダは?」
「ん?もう食べたぞ」

食事も終わり、いよいよ魔法の講義を受けるために、天月を呼びに部屋へ向かうのであった。


「天月ちゃん、緊張するね」
「うん、まあそうだね。出来る気しないけど、魔法なんて無理じゃね?」
「うんうん」
「Cランクから上がれない人は、追い出されるみたいだよ」
「ふーん。ウチは別にそれでもいいけど」
「あははは」

葵は緊張していてそわそわしている。

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