第12章 Tシャツ裏事情
絶対に赤くなっているであろう顔を隠したくて、持っているTシャツで顔を覆う。
相変わらず隣で笑っている蛍と山口くんを恨めしく思っていると、ふと肩を掴まれた。
「·····。」
Tシャツから少しだけ顔を上げると、そこにはとても真剣な顔をして私の肩を掴む西谷先輩と隣に佇む田中先輩
。
「このTシャツには意味がある!!」
『···っ!?』
田中先輩ががクワッと目を見開いて言った。
驚いた私の目も見開いてしまう。
「、これから練習試合も増えるしインハイ予選もある。ってことは、他校と会う機会が増えるってことだ。」
「うちの大事なマネージャーに近づく輩も増えるってことだ!!」
「練習試合には絶対にこのTシャツを着てこい。わかったな。」
「このTシャツを見て気づくはずだ。ちゃんは高嶺の花。手の届かない存在だ·······ってな。」
西谷先輩と田中先輩が交互に喋るその言葉を聞いて、横でさらに蛍達が笑っているのが聞こえる。
西谷先輩と田中先輩達の背後に見えている先輩達は、困った顔をしているし、影山くんと日向くんはポカンとした顔をしている。
高嶺の花のTシャツを着るのは恥ずかしい。恥ずかしいけれども、西谷先輩と田中先輩は2人なりに色々と考えてきっとこの文字をTシャツに刻んでくれたのだ。
蛍達に笑われているのがなんだ。私は先輩達の言う通りこのTシャツを着る。
『先輩達ありがとうございますっ。練習試合には、このTシャツをきてくることを約束します。』
先輩達がとてもいい笑顔でこちらを見ている。
「さん、っ本当にそれ着ていくの?」
「っ、これ以上笑わせないでくれる。お腹が捩れる。」
まだ笑っている蛍と山口くんの横っ腹をぎゅっと摘んでやった。
痛って言ってるけど、今日は謝ってあげない。
散々私のことを笑ってくれた罰だ。
そういえば、こんなに私は笑われてしまったけれど潔子先輩はどうだったのだろうか。
私がTシャツを広げている間に部室に入ってきているのを見ていたし、視界に入っていないと言うことは、私の背後にいると言うことだ。
振り返って潔子先輩の姿を確認する。
『潔子先輩はどうで····し····、·····え?』