第7章 お昼休みの出会い
困ったことになったと思う。
目の前に出来ている人集りを目の前に、冷や汗が流れる。
なぜなら私は、今からこの目の前の人集りに突進していかなければならないのだから。
ことの始まりは、蛍から聞いた話だった。
実は甘いものが好きな蛍から聞いたのだけれど、この学校のお昼休みの購買には、限定のミルクプリンなるものが販売されているらしい。牧場から送られてきた牛乳を使った、とっても美味しいプリンらしいのだ。
私は甘いものが大好きだ。
是非食べてみたい。
そんな安易な考えで、私はお昼休みの休憩が始まったと同時に教室を出て購買へ向かう。
そして、向かった先の購買で見た光景がこれだ。
押し寄せる人、人、人。
私は購買を舐めていた。ここは戦場だっ。
購買には様々なものが売っている。
パン、おにぎり、お弁当に、食後に食べられるゼリーやアイス。
そしてプリン。今まで、お弁当を持ってきていたので、購買とは無縁だったけれど、ここの購買のパンやお弁当はとても美味しいらしく人気らしいのだ。らしい、というのはこれは全て、たまに購買を利用する蛍や山口くんに聞いた話だからだ。
人が凄いと聞いてはいたけど、これ程とは。
帰ってきた山口くんが、少しヨレヨレだった気がしたけど、このせいだったのか。
ちなみに、蛍はいつも通りだった。今思うと、蛍はどうやってここを切り抜けていたんだろう。
身長が高いというのは、こんな所でも役に立ってしまうのだろうか?
兎にも角にも、ここでうじうじしていても、ただ限定のプリンが減ってしまうだけ。お財布を胸に握りしめて、いざ突撃。
しかし
『っうぁ。』
少し進んだ所で、波にのりきれず押し戻されてしまった。
そして運の悪いことに、押し戻されて元の場所に戻ってきてしまったならまだしも
『っっ。』
かかとが床に引っかかってしまった。
こんな時、自分に日向くんみたいな反射神経があればと思う。
きっとあんな素敵な反射神経があれば、こんなおっとっとーみたいなテレビみたいな展開で後ろに倒れ込んだりしなかった。
私の両手は財布を抱えている。
倒れる。
そう思って思わず目を瞑ったのに、一向に背中に衝撃がない。
どころか、ポスンと音を立てて背中に何かが当たった音。
私、倒れていない。