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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第23章 番外編 とある少女Aの独白






『大丈夫だよ。私にはちゃんとわかるよ。笑ってるのも、困ってるのも、怒ってるのも。…ちゃんと全部わかるよ。』



「ぇ…?」



静かにそう告げた彼女は、少し困ったように眉を下げながら微笑んでいた。
光に揺れるはちみつ色の瞳がやっぱり綺麗だなと、そんなことを感じながら、彼女が言った”わかるよ”のその言葉が、一瞬理解出来なくて。言われたことの無いそんな言葉に、今度はこちらが首を傾げてしまった。


彼女は少し考えるように、視線を上に移したり下に移したりしながら、意を決したように僅かに微笑んだ。未だに、その眉は少し下がったままだ。




『えっと、あのね……。』




いつもより、少し小さな声で始まった話は、今まであまり聞いたことの無い彼女自身の話だった。
バレー部の話や、東京にいるという幼馴染の話。そんな話はよく聞いたけれど、そう言えば彼女自身の話はあまり聞いたことがないなと思いながらも、その鈴のような声に耳を傾けた。




どうやら彼女は、人に対しての機微というものに人よりも聡いということだった。例えばそれは、表情だったり声だったり動きだったり、ほんの些細なことからもその人の感情や、性格というものを悟ってしまうらしい。時には、いつもと違うその動きから体調の変化まで悟ってしまうこともあるのだとか。
彼女のそれは、病気と呼ぶ程の大袈裟なものでは無いと彼女自身は言ったけれど、思うに日常生活を生きていく上で、それはとても、生きづらくはないのかと咄嗟に心配になった。

けれど、彼女はそんな自分自身のその視線や意識を、あまり他人へ向けないことで普段は”気にしない”ことにしているらしい。
思えば彼女が初めて教室に入ってきたあの時から同じ時を過ごしてきて、少しおや?と思うことも確かにあったのだ。

月島や山口、そして私に向けてくれる彼女の気遣いは本当に細やかで、確かに私も彼女に対してとても思いやりのある、周りの良く見える聡い人なのだと思った。けれど、ともすれば彼女を遠巻きに見ている人達というのか、彼女の言わばテリトリー外の人達に対しては、本当に無頓着なのだ。

彼女に向けられる、憧憬や、恋慕、あるいは邪な視線や思いにも全く気づく素振りを見せなかった。


それはそうだ。だって見て見ぬふりをしている訳じゃない。
本当に視ていないのだから。









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