第22章 インターハイ予選 対伊達工業戦
同じようにメッセージを送ったクロちゃんから返事がないのは、もしかしたら疲れて寝てしまっているのかもしれない。
今年度から、バレー部の主将を務めているクロちゃんはきっと気疲れも多いのだと思う。
飄々としているように見えて、周りのことを良く見ているし、面倒見も良い。練習内容を考えたりするのも以前やっているのを見たことがあるから、それを今も続けているのかも。
少し心配になるけれど、私と違って器用なクロちゃんはきっと力の抜き所もわかっているのだと思う。よく体調を崩してしまう私とは対照的に、クロちゃんが体調を崩してしまうことなんて滅多にない。
それでも、ゆっくり休めているといいなと思う。
もしかしたら、ただ携帯を携帯していないだけかもしれないけれど。
にゃーん。にゃーん。と、メッセージを返す度に短くても帰ってくる返事にほんわかと嬉しい気持ちになりながら、ホットアップルを飲んでまた癒される。
テレビ画面にまた視線を移すと、青葉城西が最後の1点を決めたところだった。
及川さんの率いる青葉城西は本当に強い。
音駒高校のプレイに少し似ているなとも思う。及川さんもきっと研磨みたいに対処力に優れているんだ。
それに加えてあのサーブ。
怖いな、と思う。
でも、それと同時に、皆なら大丈夫だとも思う。
残ったホットアップルジュースは、もうすっかり温く人肌くらいの温かさになってしまったけれど、それでもやっぱり美味しくて。
ぐっと全部飲み干せば、レモンの皮が口の中に沢山入ってきた。それすらも爽やかで心地良い。
明日も早い。
まだいつも寝る時間よりも少し早いけれど、ベッド潜り込んでしまおうとティーカップをシンクに置いた。
この時の私は、皆の勝った喜びの気持ちが私の心にも浸透しているように、体の中が喜びで満ちていて。
積み上げてきたものが、簡単に終わってしまうのだと。
勝者がいれば、絶対に敗者がいて。あっさりとやってくるその終わりというものは、いつも背中合わせなのだということを失念していたんだ。
そして、その敗北という足音がすぐ近くまで来ているということをこの時の私は知らないでいた。