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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第17章 薄紅葵のティータイム




side 及川 透



笑顔に見とれて言葉が出ない。なんて、小説ではよくある1文だと思っているし、なんなら自分でも見たことがある。そんなのは本の中だから有り得ることで、現実は見とれる程のものなんてないだろうとどこか冷めた頭でずっと思っていた。でもまさか、それを自分が体験してしまうなんて。


およそ、高校生になったばかりの女の子とは思えない静かで綺麗な、ティーポットからお茶を注ぐ時のその仕草、その指先。
そっとティーカップが触れる唇。
その優雅な仕草に、心臓がドキっと大きな音を立てた。

かと思えば、お茶請けに出されたクッキーを美味しい美味しいと、ニコニコと微笑むその笑顔はとっても幼く見えて。
何だかそのアンバランスさに、どうしようもなく惹かれる自分がいた。

頬杖をついていた顔がいつの間にか手から離れている。


ただ、ちゃんのその笑顔をずっと見ていたくて、少しも見逃したくなくて、時間を忘れたように彼女を見つめていた。


『このクッキー、あんまり甘くなくて、バターの香りが沢山して、とっても美味しいです。ハーブティーにもよく合っ···て···、及川さん?』


「あ、んっ、うん!ごめんごめん、ボーッとしてた。ちゃん、クッキー好きなら及川さんのもどーぞ。」



じっと見ていたのがバレてしまった。
らしくもなく慌てる自分を隠すように、目の前に置かれたクッキーの入った小さなお皿を彼女に差し出した。


一瞬嬉しそうに目を輝かせた後、すぐに申し訳なさそうに眉毛が下げられた。
こんなにもコロコロと表情が変わるのか。



『あの、でも、悪いです。これ以上良くしてもらっては···。私がお願いしに来た立場だったのに。』


本当に彼女は真面目なたちらしい。
目はクッキーに釘付けなのに、しょんぼりと下げられた眉毛が本当に可愛い。



「ははっ、全然いいよ、遠慮しないで。ちゃんが喜んでくれたら、俺も嬉しいから。」



ぱっとまた顔に笑顔が咲く。彼女の目の前に差し出した小さなお皿を見つめてありがとうございます、とまた微笑むちゃんの顔に、こちらも頬が緩む。
また綺麗な仕草でつままれる小さなクッキー。
ちゃんが言うには、どうやら紅茶の味がするらしい。



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