第16章 夕暮れの微熱
自分の手のひらを見つめて、思いに耽る。
これから大会までに、やりたいことは蛍に言った通り沢山ある。
それなのに、またこんな風に熱を出してしまって自分の不甲斐なさに溜め息が出る。頑張ろうと思うといつもこれだ。
小さい頃よりも動けるようになったけれど、やっぱりなかなか思うようにはいかないみたいだ。
落ち込みそうになるけれど、いつまでもウジウジ考えても仕方がないことはもう学んでいる。コツコツと、目の前にあるものから順番に、焦らずに。
何度も自分に言い聞かせてきた事だ。
今回迷惑を掛けてしまった分は、自分が返せるものでしっかり返そう。
ふぅ、と一息ついて机の上に置かれた紙袋に視線を移す。
そこには以前母親と買い物に行ったときに買ったものが入っている。中身は色とりどりのフェルト生地。
定番だけれど、みんなにお守りを作りたいと思って買ってきたものだ。
オレンジに黒、赤に白に緑にと、とても沢山準備したのだ。
烏野に音駒、ぼっくんと京治くんにも渡したいから梟谷カラーも準備した。人数を考えると、結構な量になりそうだ。
中学の時からお守り作りを始めて、今年はもう4年目。
初めのころはプスプス指に針を刺していたものだけれども、もう裁縫はお手の物だ。
少しでも、皆が喜んでくれたらいいな。
試合の時に、力になってくれたらいいな。
その為にも、蛍に言われた通り今は休まなければ。
すぐ側にあるカーテンに手を掛けて外を覗いてみる。
すっかり暗くなった空と、空にうっすらとかかっている雲が見える。
少し開いた窓から入る風が、少し汗をかいた体に心地いい。
あぁ、けれど今はしっかりとご飯を食べるべきだと、急にグーグーとなりだしたお腹を押さえて私は立ち上がった。
部屋に吹き込んだ風が、またカーテンをフワリと攫っていった。