第4章 友達
だけど物心ついた頃から人を疑い続けたあたしは、そう簡単に人を信じられるわけじゃない。
この言葉の裏にある何かが見えそうで
怖い。
『何が目的なわけ?』
「目的ですか。そんなものありませんが、何か理由がなければ信じてもらえそうにないですよね。強いて言うなら…
僕にない強さを持っているから、でしょうか」
『…強さ?』
「僕はいつになってもレギュラーになれない自分が嫌で、無理だと思ってしまった自分が嫌で逃げてしまいました。今ではある人に救われて続けていますが…
その時に橙乃さんを見たんです。周りの評価なんて気にも止めず真っ直ぐ生きている、橙乃さんを。
僕も橙乃さんみたいな強い人になりたい。だから橙乃さん、
僕と友達になってください」
『あたしは…』
あたしは強い人間なんかじゃない。
『あたしは強くなんかない。
気にせず生きれるのはもう慣れただけ。
真っ直ぐ生きてるんじゃない。
ただこの道しかあたしには残されていないだけ』
「それでも僕は橙乃さんの事をもっと知りたいんです」
水色君の目は本気だった。
久しぶりに見た、まともな人間らしい表情。
今ではこんな表情は滅多に見る事が出来ない。
もしかして、この人なら…
『…いじめられても知らないよ』
「大丈夫ですよ。僕には橙乃さんがいますから」
『…橙乃。でいいから』
「僕は黒子テツヤです。よろしくおねがいしますね、
さん」
橙乃14歳、中学2年の春。
人生で初めての
友達が出来た。