第1章 庭園の蝶
僕の唇は、市丸隊長の唇に塞がれていた。舌まで絡ませてくるのは、蝶の味を教える為か。僕はそう思っていた。
「解ったぁ?蝶の味」
「…解りません」
どんな理由にせよ、市丸隊長とくちづけを交わしたのだ。蝶どころではない。
「ボクはひとつ、イヅルの事が解ったわ」
そう言って隊長は笑った。
僕の心臓が跳ねる。
もしや隊長は、とうに僕の気持ちに気付いていたのかもしれない。わざと素知らぬふりをして唇を重ねてきたのだ。
隠そうとしていた気持ちが筒抜けだった事実に、頬が染まる思いがした。
けれど、何も訊けなかった。
忘れもしない、市丸隊長との初めての接吻。
銀粉舞う陽の下での、市丸隊長の妖しくも美しい、蝶と戯れる様。
次第に僕は、自分の居場所を見つけたように隊に馴染み、市丸隊長に益々惹かれてゆく。
終