第1章 紡ぐ時間
緑の木々の葉を揺らして風が通り抜ける度に、陽差しがキラキラと零れ落ちる。
森の中で暮らし始めて一週間が経った…と思う。ここに居ると時間の経過を気にしなくなるから、自然の流れのまま日々を過ごしていて。
まだ慣れないけど、きっと大丈夫……深栗が、いつも傍にいてくれるから。
「…あれ、深栗」
家に戻る道で、反対から深栗がやって来るのを見つける。
「どしたの?」
「…探した…」
「枝を拾ってくるからって言ったじゃない」
苦笑しながらあたしが言うと、深栗はばつが悪いのか視線を少し逸らす。
「淋しがり屋さんだね」
あたし達はいつも一緒にいる。片時も離れず、こうして傍に。
深栗はもうあたしと同じように睡眠をとれる。
薄い月明かりの中並んで寝そべって、色々な話をしたり。深栗は自分の過去を話したがらないから、少しずつ…だけど。
「……もっと…」
「え?」
「もっとこっちに来い…」
時々深栗は、普段と変わらない表情でどきっとする事を言う。
「…寒いの?」
「…ああ…」
「じゃあ、あたためてあげる」
腕を伸ばして深栗の首元にくっつく。けど、これじゃそんなにあたたまらないかな…
「…わっ」
するといきなり深栗があたしの腰に腕を回してきた。予想以上に密着し、恥ずかしくて体がほてる。
「深栗…っ」
「……暖かい…」
あたたかい…
そう、二人でいれば暖かい。寒い夜なんてあたし達にはない。
あたしは深栗の胸に顔をうずめた。
森の中、二人だけで紡ぐ時間。ひとつひとつを、胸に刻み続けよう。
あなたが好きだと言ってくれたあたしの為に。
あたしの大好きなあなたの為に。
end