第7章 ヘイヘイヘーイ
「何お前ら、倦怠期?早過ぎね?」
体育館から出ると、すぐ外に居た黒尾くんに声を掛けられた。
「放っといて」
「喧嘩か?」
「……ただの嫉妬だから、問題ない」
黒尾くんの横を通り過ぎ、足早に歩く。
自分の心が狭くて嫌になる。
「夏美さん!」
「あ、灰羽くん。どうしたの?」
「どうもしませんよ?
夏美さん見つけたから来ました!
あと俺、リエーフです。
リエーフって呼んでください!」
「リエーフ……くん?」
「良いっすね!俺的には呼び捨てが良いけど」
「気が向いたらね。
リエーフくんどうしたの?迷子?」
「夏美さんこそどうしたんですか?」
「え?」
「悲しそうな顔してる。
悩みごと?嫌なことあった?俺聞きますよ!」
「ううん、大したことじゃないから大丈夫よ」
「大したことじゃないって決めつけて、自分を追い込まないでくださいね。
あっちの日陰行きますよ」
腕を引かれ、連れて行かれる。
腕を掴むその手は大きくて、熱い。
「わ!あ!手!すいません!」
日陰に着き、引っ張っていた腕に目を落としたリエーフくんが慌てる。
さっきまでとは違い、顔を赤くして慌てるリエーフくんが可愛くて、笑みが零れる。
「あんなに強引だったのに!」
「やっぱり夏美さんは笑ってた方が可愛いですよ。
俺、その笑顔好きです」
「……ばか」
言うタイミングとか、色々狡い。
不覚にも赤くなってしまった顔を隠せる術は、何もない。