第3章 カワイイ後輩、憎い後輩
「あ、センパイ!
おはようございます!」
朝練の為に体育館に向かうと、珍しくナナちゃんの姿があった。
「あれ、早いね?
いつもは終わり頃に見に来るのに」
「え、バレてました?
やだ、恥ずかしい」
頬を赤く染めるその顔、可愛い。
「えっと、あの……!」
モジモジと恥じらいながら、上目遣いに私を見上げる。
可愛い。
「わたし、マネージャーやりたいです!」
「え?あ、本当?
良かった!ありがとう!
入部届け貰っておくから、あとで教室に行くね?」
「はい!
あ、あとセンパイの連絡先、教えて欲しいです」
潤んだ瞳が可愛い。
こんなの惚れない男は居ないよね。
「もちろん」
「わぁ、嬉しい!ありがとうございます」
その場で連絡先を交換し、朝練に合流した。
あの可愛さに、勝てるかな、私。
ああいうタイプの女の子は好きじゃなかった筈なのに、普通に可愛いと思ってる自分が居る。
「夏美ー、赤葦のカノジョと何話してたんだー?」
「ん?内緒!あとで分かると思うよ」
「教えてくんねーの!?」
光太郎の横には、赤葦。
この話をいつもの表情で聞いている。
赤葦、どんな気持ちで居るんだろう。
「赤葦、ナナちゃん、可愛いね」
ポロッと漏れた本音。
「当たり前です」
単調な言葉とは反対に、ふわりとした優しい笑顔。
ナナちゃんの話をするとこんな表情になるんだね……。
ズキズキと痛む胸。
それに気づかないフリをして、いつもの笑顔を作る。