【文スト】ボタンを押したら飛んじゃった【wrwrd】
第1章 0.01 全ての始まり
ーーーとある国のとある執務室
《グルッペン、今大丈夫?》
ピピッという無機質な音がインカムから響くと同時に、聞き慣れた少し高めの声が自分の名を呼ぶのが聞こえた。
「大丈夫だゾ。どうしたロボロ。」
俺は答えると、持っていた万年筆を机に置き紅茶に口をつける。
《城壁の方でセンサーに何かが引っかかってん。侵入者らしき影は見えんのやけど…。ゾムにでも見てきてもらう?》
防犯システムの操作をしながら話しているのだろう。カタカタとキーボードを叩く音が後ろから聞える。
「城壁まで行くのに他のどのシステムにも引っかかってないんは腑に落ちんな。ロボロのシステムなだけに誤反応も考えにくい。ーーーーゾム、聞こえるか?」
俺はインカムを操作してゾムに繋げる。
《ーーーおん、聞こえるで。城壁やな??今向かっとるとこや。》
ゾムも俺とロボロの通話を聞いていたのだろう。既に状況を理解していた。
声の反響があるのからして…。
「お前、またダクト通っとるやろ。後でトンチに怒られるゾ。」
《ちょ、言わんといてくださいよ〜ww 城壁までこの道が最短やってん。許してクレメンス〜ww》
ふふふっという笑い声と共に悪びれる様子のない声が聞こえた。
トンチに言ってやったら、恐らく徹夜続きで不機嫌であろうアイツは粛清剣をもって黒いオーラを出すに違いない。
なんてことを考えていると少ししてゾムの声が聞こえる。
《…よっと。今城壁に着いたで。…特に侵入者は…はぇ?》
「どうした、ゾム。」
ゾムの間抜けな声が聞こえどうしたのかと尋ねる。
《なんか、でっかいスイッチ?みたいなんが落ちとるで。》
《「は?」》
思わず俺とロボロの声が重なる。
《なあなあなあ!!押していい!!?こんなん押したなるわーーー!!!》
ゾムは嬉々とした声でボタンを押したいと言う。
《ええ訳ないやろ!ゾム絶対に触んなよ!!?そんな怪しいもん押して爆発でもしたらっーーー》
ーーーカチ
《………なんも起きんで?》
ロボロの説得も虚しく、カチっと言う音と共にゾムの残念そうな声が聞こえる。
《ーーー!?こんっのバカたれ!!…は?ちょっと待って、城がちょっとずつ消滅して…!!?》
ロボロの衝撃的な言葉を聞きながら
「ふむ、これで暫くクソめんどくさい書類しなくていいのでは?」
と発し、俺の意識は途絶えた。