第8章 九条天夢(新人アイドル)
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高校卒業間近、原宿でスカウトされ、あれよあれよと、いつの間にか八乙女事務所と契約。卒業後、レッスンに明け暮れ、半年たち、ついに女性アイドル夢花としてデビューが決まった。
デビュー曲のダンスレッスンのため、レッスン室に向かう。
(20分前…少し、早かったかな?)
ガチャと開けた、レッスン室。
そこにいた先客。蝶のように舞い、踊る、まさに天使ー…
TRIGGERの九条天。
可愛いとよく言われる私ですら、見とれてしまうほど、彼は天使みたいにキレイで儚げな姿。そして、完璧なダンス。
突然の光景に、目を奪われ、立ち尽くした。
「ノック位して」
タオルで汗を拭きながら、チラリとこちらを見て、九条天はそう言った。
「は、はい失礼しました…」
「……君、今度デビューする夢花でしょ」
「はい」
「時間まで、僕がダンスチェックしてあげる。踊って」
「え…え!?」
「3、2、1…」
突然カウントされ、目配せで、促された。
「わ、わかりましたよっ」
今練習中の、デビュー曲のダンスを踊る。
まだ覚えたてで、完璧ではなかった。
真剣な表情で、私を見つめる九条天の視線が、余計に緊張する。ミスを連発してしまう。
「君……やる気あるの?それ本気で踊ってる?」
冷血な目線で、見下ろすように告げられた。
「ハア、まだ覚えたてで…って、これから練習なんです…!練習したら、100%完璧になるのでっ」
「そう、じゃあ来週までに完璧にして。もう一度、僕がみてあげるから」
「なっ、なんで九条さんがそんな…」
「プロになるんでしょう?僕と同じレベルにこれないなら、今すぐ辞めるべき」
「な…」
正論過ぎて、ぐうの音もでない。
悔しくて、涙が滲んだ。