第12章 『すき』『きらい』
「……る」
「ん?あれ、気、失っちゃったかと思った」
「とーるも、して……?」
「ぇ」
「とーるも、出して」
「ライちゃん、その体で無理でしょ。いいよ俺は」
「や……っ、とーるとしたい」
「何駄々っ子してんの」
「とーる、すき……っ」
「ぇ」
「すき」
「………ライちゃん」
「ほら、来いよ來」
「斗真?」
「俺に寄りかかっていいから。これなら負担かかんねぇだろ?」
ぐい、っと軽々とあたしを持ち上げて。
正面から抱き止める斗真。
立ち膝の体勢ではあるけど、全体重を斗真が受け止める形となるこれは、確かに体はけっこう楽かもしれない。
「どーなっても知らないよ……?」
「ひぁ…っ!!ぁ、それ…ッッ!」
斗真に寄りかかりながら、後ろから透が突き上げる。
視界にうつるのは、今あたしを後ろから犯す男と全く同じ顔、同じ声、で。
頭が麻痺する。
混乱する。
「気持ちいいとこ、あたる……?」
「…ッッ!ふぁ…っぁんッッ、とー……っる」
揺さぶられる度に。
何もかもが気持ち良くて。
ふわふわと気持ち良すぎて。
どーにかなっちゃいそう。
「ぁああッッ、とぉ……、も、……ィ……っぁあ」
斗真の肩に両方の掌をしがみつかせながら、体は弓なりに限界まで反り返る。
快感を全身で受け止めようと体に力を入れた、瞬間。
「むかつく」
後頭部に指し入った力強い右手によって強引に引き寄せられ。
「キス、してやるよ來」
絶頂を迎える直前に重なった唇は。
さらなる絶頂へとあたしをいざなうのだ。
「斗真、ライちゃんの声聞きたかったのに」
「お前でよがってる声はやっぱむかつく。だから聞かせない」
「ふぅ、んんぅ」
右手でそのまま唇を押さえられれば。
口から出るのはくぐもった言葉にならない声。
「変な独占欲は嫌われるよ?お兄ちゃん」
「余計な話で誤魔化してんじゃねぇよ、早く済ませろって」
「ライちゃんの中、ほんと気持ちくて。ずっといたいんだもん」