第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》
ーーーつくづく思う。
神様は不公平だ、って。
「わ…っ!」
小雨の降る中ぼんやり歩いていると、
反対方向からやってきた女の子とすれ違いざまに肩がぶつかり……
そのはずみで、トートバッグが手から離れた。
じろりと睨みつける、目の動きーーー
「す、すみませ…」
謝ろうとした矢先、
彼女は不機嫌な様子でさっさと行ってしまった。
遠ざかる後ろ姿を見つめ……
濡れた地面からバッグを拾い上げた私は、またゆっくりと歩き出す。
“ダッサ”
去り際、小声でそう言われた。
……怒りは湧いてこない。だって本当の事だから。
幼い頃から人見知りで気が弱く、とりわけ地味な容姿の自分。
今時のお洒落やメイクなんて似合わない気がするし、自信も無いし。
最低限の身だしなみだけは心掛け、ひたすら地味に大人しく生きてきた。
「綺麗だったなぁ、あの子」
もしも容姿に恵まれ明るい性格だったなら、今頃どんな人生だったんだろう?
華やかな魅力に憧れを抱きつつ、京都の町並みを堪能していたのだが……
次第に雨脚は強くなり、これ以上は耐えられまいと傘を求めてコンビニを探し始めた。
「えーと、石碑ってこの辺にあるはずなんだけど……なんで見つからないの?」
日々の仕事疲れを癒やす為、有給休暇を利用して訪れた京都一人旅。
なのに。
通行人に悪態をつかれるわ雨に打たれるわ道に迷うわ……散々な事態に襲われる始末。
ああ、私ってば本当にツイてないーーー
「はぁぁ……どこなのここは……」
消耗していく体力、冷えていく肌。
右へ左へと彷徨っているうちに住宅街へ入り込んでしまい、途方に暮れていたその時。
轟音と共に、眩い閃光が視界を奪い去った。