第35章 商人の嘘は神もお許し
渋々といった感じで返事をし、
「紗都ちゃんと二人っきりかと思ったのに、なんか目付き悪い男の人がいるんだもん……美人局かと思っちゃった」
不貞腐れたように呟く。
時雨先生は小さな黒目を動かして永夢くんを軽く睨んだ。
「悪かったな、目付きが悪くて……」
永夢くんはむすっと口を尖らせ、そっぽを向いた。
「……怖」
不満そうにする永夢くんにわたしは苦笑いしていると、
「ね、紗都ちゃん……オレも紗都ちゃんに首輪着けて欲しいな……」
上目遣いにねだられた。
「……そんなに欲しいですか?」
首を傾げると、身体を動かせない状態のまま甘えてくる。
「うん、紗都ちゃんのものだって証が欲しい……オレにも、ちょうだい……」