第12章 〜終恋〜
『だから、余計にこの恋は、特別だったって
想いが強くなるのかも。しかも、そんな
盛り上がり最高潮からの、婚約者登場って。
テンション上げるだけ上げさせておいて
奈落に突き落とされるって、何の試練なわけ?
それでなくても初恋なんて忘れられないのにさ』
と詩織は続けた。
『ははは、しぃちゃんが言うと
ホント、試練みたいだね・・
でも、勝手に好きになったのは私だから
片想いには、相手の許可いらないしね。
でもまぁ、確かし忘れないかもね』
(きっと、忘れられないだろうな・・)
(だよね、だからか心配なんだって)
『だから、一生忘れられないなら
いっそ、燃え尽きた方がいいよ。
私みたいに燻るより、あの時の自分は
ちゃんと向き合って、頑張ったって
思える方が、今は死ぬほど、苦しくて
恥ずかしくても、いい思い出として
笑い飛ばせる日が来る気がするよ!
だからかやっぱり
張り切って振られるしかないよ!ねっ!』
と桜奈の背中をパシッと叩く詩織。
詩織に気合いを入れられ
背中をのけ反り『イッタ〜』と言ったが
励ましてくれる詩織に応えるように
『やっぱりかー』と困ったように笑うと
紙パックのコーヒー牛乳
飲みながら、晴天の空を見上げた。
『しぃちゃん空見て!綺麗だよ。』
不意に言われ、詩織も空を、見上げた。
眩しくい青空に、真っ白な雲が
浮かんでいた。
『ほんとだ、もう夏の空だ!』
そういって、また桜奈を見つめる詩織。
サッーと心地よいそよ風を受け、桜奈の
サラサラな髪が後ろにたなびく。
何を思っているのか分からないが
初めて恋をした桜奈の
横顔は、儚くて切なげだったが
どこか輝いていて
詩織には大人びて見えた。
(綺麗になったね、桜奈)