第12章 〜終恋〜
『だから今相談してるんじゃない。
やっぱ、行かない方がいいかな・・・』
と、仔犬のような目で訴える桜奈。
『だって、行く気まんまんで、返事
しちゃったんでしょ?』と今更と
言いたげな詩織。
『うん、行くとは言ったけど。迷ってる。
私だって、引っ越しするまでの間
もう、普通に接して、この気持ちは
忘れようと思ってだんだよ。
でも、寝ぼけてされたキスだったけど
どっかで、嬉しいって思ってる自分がいて。
それで、お詫びにケーキって言われて
二人で出かけるってことを楽しみって
思っちゃう自分とか。
そうやって、好きな人と一緒に居られて
嬉しいって思うけど、反面、自分が婚約者さん
の立場だったら、凄く嫌かもって思うと
自分が嫌な人間に思える。凄く浅ましいって。
人を好きになるって、汚い自分も知ること
なんだって初めて知ったよ・・・
しぃちゃんが言ってた通りだった・・』
どんどん表情が曇って行く桜奈。
『桜奈・・・』
と、困ったような顔で桜奈を
見つめる詩織だったが
『でもさ、それは仕方ないんじゃない?
だって好きなんだもの。徳永さんとしては
ただのお詫び以上の気持ちは、さらさらないの
かもしれないけど、桜奈の方は
確かに気持ちを振り回されるよね』
(下心あるような気が私はするけど
あんな、嫉妬するみたいに、イラついてたのに
婚約者いるんだもんね・・・何なの?あの人!)