第94章 Executive
前にヒロくんから聞いた話がある
零くんが小さかった時、仲良くしていた女医さんがいて、とっても懐いていた
自転車の乗り方もその先生から教わったみたいで、急にいなくなってしまった時の落ち込み方は凄かったと…
それから直ぐに、警察官になると言い出したそうだ
零くんの守りたいものってその女医さんに関係あるのかな…
直接聞いたわけじゃないし、そこには触れないでおこう
「帰るか…送ってく
ハロ、起きろ、行くぞ」
零くんの声に素直に起きたハロ
「なにか、悩んでることがあるなら、いつでも相談しろよ」
「なに?急に…」
「なんとなく…、まぁ心配ないか
萩原、松田、ヒロ
今はみんな近くにいるから、頼るならあいつらだよな」
零くんも頼りにしてるよと言いかけた所で、零くんのスマホが鳴った
「悪い…」
電話の相手はきっと風見さんだろう
「送って行けなくなったが、大丈夫か?」
「うん、平気、気をつけてね!」
零くんを見送って、1人になった
1人になると、途端に不安になるのは悪い癖だな…
いつも、誰が一緒にいてくれてるんだなと実感する
「強くなりたい…」
都会では滅多に見えない綺麗な星空がこの河川敷からは見れる
吸い込まれてしまいそうな星空を見上げながら歩く
あ、冬の大三角
あれがオリオン座でしょ
ベテルギウス
左下はおおいぬ座
シリウス
シリウスの左側がこいぬ座
ハロみたいだなー
「あれ?シリウスの一等星ってなんだったけ?」
私の独り言に答えが帰って来るとは思わなかった
「プロキオン
ギリシャ神話に登場する、オリオンやアクタイオンが連れていた猟犬がモデルだと言われています」
「沖矢さん?!
恥ずかし…聞いてましたか?」
ばっちり、聞こえましたよと変わらぬにこやかな顔で答えられた
「女性の一人歩きは危険ですよ」
「大丈夫ですよ、これでも私警察官です」
「その前に1人のか弱い女性です」
全くこの人は、恥ずかしげもなくそんなセリフを言うのか…
言われたこっちが照れてしまう…
送って行きますと私の前を歩く沖矢さんについて行く
マンションの前で別れて、遅めの夕食を取ってベッドに入ったが、なかなか寝付けなくてベランダに出てまた星空を見上げた