第67章 Drag *
「ヒロに頼みがある」
神妙な面持ちでそう言ってきたのはゼロ
「の協力者になって欲しい」
「の?」
最近裏の社会では新種の違法ドラッグが取引されているらしい
学生まで手を出しているとか
ターゲットはカップルで、性的興奮が強くなる
セックスでの快楽は10倍まで膨れ上がるそうだ
におとり捜査の命が下ったが、何せターゲットがカップルだからと俺に協力者になって欲しいとの事だ
「いいけど、俺、警官じゃないぜ」
「だから、いいんだ
あの組織の幹部にまで上り詰めた男だ
一般人に成りすますくらい簡単だろ?他の奴らはどうしても警察官のオーラで出てしまう
ヒロなら…ヒロしかいない…とのカップルは不満か」
「いや、願ったり叶ったりだよ、正直
てか、他の奴らにはさせらねぇよ、演技でもとカップルなんて…」
それらしく見せなきゃならないだろうし、そんなこと捜査の一環でも、聞いてしまったからには俺以外の奴と組ませたくなかった
「ヒロとなら普通にしてても十分カップルに見えるしな」
「取引相手に疑われる余地もないくらい演じきってやるよ」
「必要以上に楽しむなよ」
「善処する」
俺たちに与えられた任務は、客として取引してドラックを入手すること
取引相手の写真を撮ること
このふたつだ
とあるバーであるカクテルを注文すると、マスターから指示があるらしい
髪を明るく染めて、ゼロが用意したデート服に身を包んで待ち合わせ場所に向かった
「え?ヒロくん?」
が目をぱちくりさせながら俺を指さした
「露出高めのその格好、似合ってるけど…誰にも見せたくねぇな…」
「ヒロくん、別人みたい
かっこいいけど、チャラそう」
お互いクスクス笑って腕を組んで歩く
いつかこうやって腕を組んで歩きたい
そう思った
「ここ?」
「そうだ、行くぞ」